地元住民が籠やバケツを持って集まる旗津の造船会社の進水式。

バケツを持つ人

高雄市の旗津区は造船業が盛んです。風車公園や海岸のある旗津の大通り(旗津路)からはあまり見えないのですが、それと並行して走る旧道(中洲路)沿いの方には造船会社がずらっと並んでいます。

旗津は高雄市とはいえど、都市部からちょっと離れた田舎の島です。ですが、旗津の造船業は世界的にも有名らしく、何気に見ていたディスカバリーチャンネルに近所の造船会社が出ていたこともありましたし、また別の会社ですがルイ・ヴィトングループの総裁のプライベートクルーザーを旗津の某造船会社が推定約10億元(約30億円)で請け負ったことも台湾では有名な話です。

さて、造船会社の多いこの旗津で地元住民が楽しみにしていること。それは新しく完成した船の「進水式」です。私も過去に何回か進水式に行ったことがあります。今回も進水式があるらしいという話を聞きつけ、ダンナと娘と3人で行ってきました。バケツは持って行きませんでしたが、大きめのバッグを2つ用意して行きましたよ。

目次

台湾の進水式

今回行ってきたのは、水産業者のイカ釣漁船の進水式。進水式とは、造船会社で新しく完成した船を初めて海に浮かべるための儀式で、たいていは来賓を招いてお披露目パーティーが行われます。私たちが到着した時は、来賓の方の挨拶と中国獅子舞が行われているところでした。

会場には来賓の方々に混じって、バケツや籠、ダンボールを手にした、明らかに来賓ではないと思われる人々が大勢集まっていました。洗面器や洗濯桶を持った人もいました。一体なんのためにそんなものを用意して来たのだと思いますか。

いよいよバケツの出番

さて、各種関係者の長い挨拶が終わり、いよいよ私たち住民が楽しみにしている儀式が始まります。このために集まった住民たちが、待ってましたと言わんばかりに持参したバケツや籠を高々にあげて準備しています。

バケツを持つ人

いよいよ儀式の始まりです。掛け声と共に、船の上から何かがばらまかれました。

進水式

船の上からばらまかれたのは、お餅とお金。台湾の進水式では、船の上から餅や赤い紙で包まれたお金をまき、人々は用意したバケツなどでそれらを回収しているのです。傘をひっくり返して回収している人もいましたよ。

私たちも以前はバケツを用意して行ったことがあるのですが、経験から言って、ばらまかれるものが少ない場合はバケツを上にあげても効果はあまりありません。バケツに餅やお金が入ることは皆無です。それよりも地べたに落ちたものを拾っていったほうが早いことを知っていいるので、今回はバッグだけを持っていったのです。

写真ばかり撮っている私は、「ママも写真ばっかり撮ってないで拾って!」と娘に怒られ、慌てて回収作業。約5分間くらいの短い儀式でしたが、地元住民はとても必死に楽しそうに拾っていました。

私が子供の頃に経験した上棟式の餅まきみたいなものが進水式で行われるのですが、これは造船業が盛んな地域でしか見ることができないため、都市部に住んでいる人にはあまり知られていないようです。フェイスブック(台湾ではFBと呼ばれます)に進水式の様子の写真をアップしたら、台湾人のお友達から「それはなんの儀式?」「初めて見た」「おもしろそう」などというコメントをたくさんいただきました。

戦利品

さて、今回の進水式の戦利品は・・・

餅とお金

お餅15個と赤い紙に包まれたお金。中身は合計38元でした。以前参加した進水式では1米ドル札がばらまかれたので、ちょっと期待していたのですが・・・。

娘は1人でお餅を10個拾えたことをご近所さんに自慢しながらお餅を配って回りました。ちなみに私はお金を3袋、ダンナはお餅5個とお金を2袋という結果でした。

最後に

旗津で生まれ育ったダンナは小さい時からなんども経験している進水式ですが、同じ台湾人でも都市に住む人にはとても新鮮だったようです。「次ある時には教えて」というコメントもいただいたのですが、実は私たちも当日「あとで××造船会社で進水式があるらしいよ」とご近所さんの噂で知ることが多いのです。

もし運よく進水式に出くわしたら足を運んでみるのも楽しいですよ。わざわざ観光の時間を割いてまで行くことはないと思いますが、高雄に長期滞在している人は旗津に遊びに来るついでに造船会社をのぞいてみるのもいいかもしれませんね。たいていは朝9時〜10時ごろ行われます。「進水典禮会場」という看板と、バケツを持った人々を見たら当たりです。