台湾の高校入試「會考」。

4月入学の日本では冬が受験シーズンですが、9月入学の台湾では夏前が受験シーズンです。

中学3年生の娘も5月中旬に高校受験を控え、残り2週間の残された時間を最後の追い込みに費やしています。

日本も台湾も高校に入学するのには試験が必要だという点については同じなのですが、実は選考システムが大きく違います。

今回の記事では、台湾の高校受験について日本と比較しながら書いていこうと思います。なお私自身が高雄在住なので、この記事で出てくる情報は高雄のものが中心となっています。全国的に大きな違いはありませんが、細かい点で異なる部分があるかもしれないということを先に申し上げておきます。

目次

入学試験

公立高校の一般受験を例にとってみてみましょう。

日本の場合は、各都道府県の公立高校が県ごとに行われる高校入試によって生徒を募集します。

受験生は、学校や塾で行われる模擬試験の結果(いわゆる偏差値)を参考に、受験する高校を1つに絞ります。不合格になってしまうと公立高校にはいけなくなってしまうので、模試で出た偏差値を見て慎重に選んで願書を提出します。複数の公立高校に出願したり、受験後に志望校を変更することはできません。

例えば、A高校(偏差値65)、B高校(偏差値62)、C高校(偏差値58)の公立高校があったとして、自分の模試の偏差値が63、64くらいだったらB高校を、模試の偏差値が60前後ならC高校を受験するのが最も安全な選択だと思います。

もし、普段61くらいの偏差値の人がC高校に出願し、本番の入試で偏差値63相当の成績をとったらどうなるでしょうか。当日の試験でB高校に入れたであろう成績を収めたとしても、C高校に出願しているのでB高校に入ることはできませんよね。

「こんなことならB高校を受験するんだった」と思うこともあるかもしれません。

一方、台湾では合否を判定する「入学試験」というものはありません。

5月に行われる全国統一試験の結果によって高校の進学先が決まります。この試験のことを「會考」と呼び、中学3年生は基本的に全員受験します。

日本との大きな違いは、試験前に志望校を絞っておく必要がないということです。

台湾では、5月中旬に行われる會考から約1ヶ月後の6月に発表される試験結果をもとに、受験生が希望する進学先を30選ぶというシステムをとっています。

高雄市には、「高中(高級中學)」と呼ばれる3年制の普通高校が43校、「高職(高級職業學校)」と呼ばれる3年制の専門高校が21校、「五專」と呼ばれる5年制の専門高校が21校、全部で85の高校があります。

受験生は6月に発表される個人成績をもとに専用サイトで自分の行きたい高校(科)を第一志望から30順番に選んでいきます。あとは7月に「あなたは〇〇高校の△△科に決まりました」という発表を待つだけです。

第一志望の高校に入れるかどうかは成績次第ですが、自分の試験結果相応のところに希望を出せは少なくとも第三志望までの学校には入れるでしょう。

第1志望から第3志望までは獲得した得点をそのまま申請でき、第4志望から第7志望(だったかな?)は1点か2点ほど減点された点数での申請となります。ですからあまりにも実力と差のある上位の学校を志望するのは損になります。

内申点はないが似たようなものはある

日本の高校受験では、当日の入試の点数だけでなく、学校の5段階評価の結果も出願に必要です。

定期試験の結果だけではなく、授業中の態度や宿題などの提出物も関係してきます。5段階評価は担当の教師が判断するものなので、教科の先生との相性なども評価に影響してしまいかねません。

一方、台湾では資格試験やボランティア活動の点数が提出されます。

例えば、英検やボランティア活動、コンクール受賞などでそれぞれ点数が決まっていて、高雄市の場合、中学生は3年間で40点満点になるようにします。ボランティアは学校や地域で募集されるボランティアに参加して証明をもらいます。ボランティアは内容によて点数がかわります。

私の娘は学校で募集されたボランティアに2つ参加して点数を得ました。1つは、学校が外部の資格試験の会場になった際のお手伝い。案内役として先生と一緒に1日中エレベーターの前で待機していました。

もう1つは、学校の古い机と椅子を5階から1階まで運ぶ仕事。学校で行われるボランティアは希望者が多いので抽選で決まることが少なくないのですが、体力系のボランティアは抽選なしで希望者は全員参加できたようです。

学校以外のボランティアとしては、市立図書館での本の整理、町内会の事務所でのお手伝いなどがあるそうですが、娘は校内のボランティアだけで点数が貯まったので、外部のボランティアには参加していません。

資格試験については、資格ならなんでも加点されるというわけではなく、「英検初級」「美術・音楽の校外コンクール入賞」などと項目が決められています。例えば項目外の「日本語能力試験」に合格していても加点は認められません。

このように、高校受験に必要な書類は、ボランティアや資格試験で加算された点数だけなので、いわゆる日本の「内申点」というようなものはありません。

授業中の態度や提出物の有無などは学校が個別に指導するので、高校受験には関係しません。「試験の成績は5だが積極性がないので4」、「テストの点数は3程度だが、頑張っているので4」などという教師の曖昧な主観的評価はないので、ある意味とても公平です。

※娘の通っているのは私立高校の附属中学部です。公立中学とは少し事情が異なることもあるかもしれません。また、市によっても点数の付け方に差がある可能性もあります。

會考は総合点ではなくABCのランクで決まる

會考の話に戻ります。

會考は全国統一試験で、試験科目は5教科(7項目)。

會考公式サイトより

<試験1日目>

社会:70分
数学:80分
国語:70分
作文:50分(※)

<試験2日目>
理科:70分
英語:60分
聴解:25分

となっています。

基本的にマークシートで回答する試験になります。問題ごとに配点が変わることはなく、単純に1問1点の計算です。

数学は選択問題のほかに非選択問題(筆記問題)があり、こちらは配点が大きくなります。

作文は黒ペンでの提出になります。

作文は全員受験する必要がありますが、高雄市は作文の点数は考慮しません。作文の点数の付け方も採点者によって違うかもしれないので、個人的には作文が試験科目から外されてよかったと思っています。

英語と英語聴解はそれぞれ独立した試験ですが、結果は総合して計算されます。

採点方法がかなり独特

さて、會考の点数の付け方ですが、とても独特な方法を採用しています。

會考は単純な100点満点の採点方法ではなく、各教科の正答数(正答率)によってA、B、Cにランクづけされます。その年の試験の難易度にもよりますが、大まかにいうと、正答率90%以上でA、40%以上でB、それ以下でCとなります。

AとBはさらに、A++、A+、A、B++、B+、Bに分けられます。CはCだけです。

言葉で説明しても分かりにくいので、表で示すとこんな感じです。

正答率に関しては教科によっても違ってきます。例えば数学は筆記もあるので、A++は90%ほどまで下がる場合もあります。その他の教科についてはほぼこんな感じになります。

高雄市の高校の場合

では、高雄市の高校を例にとって説明していきます。

下の表は娘の通っている塾で配られたデータをわかりやすく作り替えたものです。高雄市にある85の高校のうち、「1A4B(Aが1教科、Bが4教科)以上」の12校までの資料を表にしました。塾によって多少データの誤差があるとは思いますが、この表をもとに説明します。

なお、こちらに表示されているデータは「足切り」ではなく、合格の目安です。

高雄市最強の高校といえば、高雄中學と高雄女中。高雄中學は男子校(音楽科などは女子も可)、高雄女中は女子校で、通称はそれぞれ雄中と雄女です。

台北市でいうところの建中と北一女、台中の中一中と中女中、台南の南一中と南女のような立ち位置です。

(台湾の15代総統の蔡英文氏は北一女、16代総統の賴清德氏は建中出身です!)

雄中、雄女、そして高雄師範大学附属高校(以下、師大)の合格目安はそれぞれ5Aです。ただし同じ5Aでも、必要となる「点数」の目安が、雄中は30点、雄女と師大は27点となっています。

どういうことかというと、同じ5Aでも、雄中はただの5Aだけでは点数が足りず、少なくとも+の数が5つ必要だということです。

例えば5教科ともA+だったり、A++が2教科、A+が3教科だったりの組み合わせで、とにかく+の数が5つ以上ないと雄中は危ないかもしれません。+のない、ただの5A(純5A)の人は25点にしかならないので雄中には合格はできないと思います。師大でさえも難しいかもしれません。

また、+の数が同点だった場合は、国語の+の数の多い人から優先になります。
(国語>数学>英語>社会>理科の順番)

2024年(民国113年)は、6月21日に個人成績が発表されます。市内の総合順位と男女別の順位が出るので、それを見てから志望校を選択することになります。

選択する期間は1週間。専用サイトで志望校を30選んで申請します。

高雄市の受験生数は毎年2万人強。男子も女子も、男女別の順位で500番以内に入っていれば雄中・雄女は確実、800番以内だったらワンチャンあり?というところでしょうか。

ワンチャンあるかもしれないと言ったのには理由があります。

5A5+以上の成績を収めた学生の中には、伝統的な男子校・女子校が嫌で、実質2位の師大を第一志望にする人も一定数います。師大は師範大学とキャンパスを共有していて、校風もとても自由です。高等部は制服もないし、文化中心の目の前という環境のよい立地も人気の高い理由です。

また、公立高校には進まず、道明高中のような私立の進学校の特進クラスに進む人もいます。娘は道明高中の中等部に通っているのですが、内部進学する人も結構多いです。

特に青英班(エリートクラス)と呼ばれる理系のクラスの内部進学基準は、中等部での成績が50番以内の学生に限られています。外部入学は會考の点数が31点以上必要です。その1つ下の自然組自強1班(理系1組)への内部進学は120番以内、外部入学は30点必要です。つまり道明の理系上位2クラスに入るためには雄中と同じかそれ以上の成績が必要になります。

ABC採点方式は公平か不公平か

台湾の採点方式はとてもユニークなのですが、ちょっと不公平かもしれないと思うところもあります。

會考の結果には「分」と「点」がありますが、第一関門は「分」の方。まずはABCだけの判定で順位が決まります。+の数は「分」が同点となった場合に考慮されます。

例えば、5Aの生徒と4A1Bの生徒がいたとします。まずは「分」で判断されるので、成績の順位は5A(30分)、4A1B(29分)となるので、5Aの生徒のほうが上です。

でも、もしこれが100点満点で採点される方式であれば、合計点は4A1Bの生徒のほうが上になる場合も出てきます。

例えば、5Aの生徒が+なしの純5Aだった場合。それぞれの教科で90点獲得したとすると、合計点は450点になります。

一方、4A1Bの生徒は4教科でA++を獲得、1つB++があったとします。例えば、4教科で98点を獲得し、1つの教科で89点だとしたら合計点は481点です。

総合点で満点近い点数を取ったとしても、1つBがあるというだけで順位がかなり下がってしまい、5Aの学校への優先順位も下がります。4A1Bの中では最高(32点)となるので、純5A(25点)のすぐ下に付くことはできますが、いくら「点」が高くても「分」優先なので、4A1Bが5Aの上になることはありません。

これは実際にあった話なのですが、模試ではいつも5Aだった私の可愛い甥っ子が、本番の試験で4教科A++、1教科B++という「4A1B」になってしまったために、雄中には入れず師大に入学しました。師大もとてもいい学校なので結果的にはよかったと言っていましたが、当時はとてもショックを受けていてかわいそうでした。ほぼ満点だったのに・・・。仕方のないことではありますが、少しだけ「不公平だー!」と叫びたくなりました。

受験の世界では1点が命取りになると言いますが、本当にその通りですね。5教科とも89点(合計点445点)の人も5教科とも40点(合計点200点)の人も同じ5Bというのは酷のような気もしますが。

さて、数日に分けて記事を書いているうちに、會考まであと1週間となってしまいました。娘には悔いのないように最後まで精一杯戦ってほしいと思います。