日本では小学校5年生から「教科」としての英語教育が2020年から始まります。今までのように、お遊びのような英語ではなく、国語や算数と同じようにテストが行われて成績もつけられるようになります。
「早すぎるのではないか」とか「英語が嫌いになってしまうかもしれない」とか、否定的な意見も色々あると思いますが、私は英語教育の早期化は悪いことではないと思います。
日本人として国語が必須なのはいうまでもありませんが、外国語である英語も同じように必須だと考えています。これは英語を教えている立場からの意見でもあり、台湾で子供を育てている親目線の意見でもあります。
目次
台湾の小学校での英語教育は3年生から。
日本の小学校では、2020年より3年生からは「必須」、5年生からは「教科」となるわけですが、台湾の小学校では3年生から教科となります。1、2年生の間は教科としての英語の授業はないのですが、学校によっては必須としているところもあります。
低学年生の英語は教科ではない。
現に私の娘が通う小学校でも1年生の時から英語の授業がありました。
まずアルファベットと簡単な単語を覚え、あとは歌を歌ったりゲームをしたりという活動程度のものでしたが、アルファベットの筆記テストと単語の発音テストはありました。
1、2年のうちはテストはあっても成績表(通知表)には記載されなかったのですが、テストの解答用紙は点数付きで返って来ましたし、発音テストも点数がつけられました。
本格的に英語の授業が始まったのは、3年生の時。
3年生になって初めて習うことはやっぱりアルファベットから。それが終わると、単語や文法を勉強し始めます。日本でいうと中学1年生でやることを3年生から始めるわけです。ただ授業日数は1週間に2時間だけなので、日本の中学生と同じ進度というわけではありません。
文法内容で言えば、4年生の英語の定期テストが日本の中学1年生とだいたい同じです。テスト内容は、文法だけでなくリスニングもあります。筆記テストとは別にスピーキングテストもあります。
台湾の小学校の定期テスト
ここで、台湾の小学校のテスト事情について少し触れておきたいと思います。
台湾の小学校では1年生から定期テストというものが始まります。普段行われる単元テストの他に、1つの学期に2回行われます。学校によっては低学年生は3回行うところもありますが、普通は2回です。どうして低学年は3回の学校があるのかというと、3回に分けたほうが1回の試験範囲が狭くなり、負担も少なくなるからです。
定期テストは日本の中学校のように、あらかじめ年間行事として組み込まれ、基本的に全学年一斉に行われます。そしてその定期テストは教科ごとにクラスの点数分布が発表されます。(学校、教科担当の先生によって異なりますが)
順位ははっきりとは記されませんが、分布表を見れば自分の子供が成績上クラスのどの位置にいるのかが一目瞭然です。また、通知表の成績は、ほぼ定期試験の点数で決まります。
英語教育の格差
英語教育は幼稚園から始まっている
台湾では幼稚園の頃から英語教育が始まっています。
台湾には多くの「全美語」スタイルの幼稚園が存在しています。「美語」とは中国語で英語のこと。つまり全てを英語だけで行う授業をやっているところです。
「英語の授業がある」ということではなく、インターナショナルプリスクールのように休み時間から給食の時間まで全てを英語のみで行う幼稚園です。2年または3年間通えば、ネイティブの子供のような英語を話すことができるようになります。
「全美語」幼稚園が英語100%だとすると、「雙語」幼稚園は50%。二か国語教育という意味の幼稚園で、中国語も勉強するし、英語も勉強する幼稚園のことです。幼稚園によっては50%のところもあれば30%くらいのところもあります。
残りは普通の幼稚園ですが、普通の幼稚園にも英語の授業はあります。うちの子供は普通の幼稚園で、英語の授業は毎日あったような気がします。週に1日だけネイティブの先生による授業が行われていました。
ネイティブの先生の授業がある幼稚園は多くないと思いますが、台湾人の先生による英語の授業はどこの幼稚園もあると思います。通常は近くの英会話スクールの先生が派遣されて授業を行います。
小学校に上がると放課後は英語塾へ
小学校に上がると、多くの生徒は放課後は「安親班」と呼ばれる、塾と学童が一緒になったようなところへ行きます。
放課後になると、安親班の先生が学校まで迎えに来てくれ、塾のバス、あるいはタクシーで塾まで連れて行きます。
昼ごはんを食べさせ、昼寝をさせてから英語の授業が数時間あり、それが終わると、それぞれの親が迎えに来るまで学校の宿題をするという画期的なケアです。
台湾は共働きの夫婦が多いので、自分で放課後に学校に迎えに行ったり塾に連れて行ったりする時間がありません。そんな時は安親班がとても便利な存在になっています。
大抵の安親班は英語塾と一緒になっていて、大抵どこの塾でも週に4〜8時間くらい英語の授業があります。
国語や算数は、両親が教えることができますが、外国語である英語を家庭での勉強だけで補うことは簡単なことではありません。ですから、クラスのほとんどの子が小学校入学と同時に英語の塾に通っています。
学校の試験の結果を聞くと、やはり英語に関しては、かなりの差が出ているようです。塾に通っている子にとっては、学校のテストは勉強しなくても90以上は取れる簡単なもののようですが、そうでない子は60点以下になってしまうようです。
クラス全員の試験の結果は、返された答案用紙に点数分布表で記されるのですが、それによると60点以下がクラスに2.3人いることがわかります。
台湾の英語の定期試験はリスニングの比重も大きいので、塾でネイティブの先生に日頃から習っていない子は点数がなかなか取れないようです。
「英語嫌いになってしまうかもしれない」なんて言ってられない
さて、日本の小学校でも本格的に英語教育が始まろうとしていますが、テストで成績をつけるべきではないとか、英語教室に通っていない子にとって不公平だ、とか、色々な意見があると思います。
楽しく授業することは大切なことですし、英語嫌いを作らないように取り組むべきという意見ももっともだと思います。
ただ、英語嫌いになるかもしれないからと言って、やらなければいけないことから目を背けるのはどうかと思います。週に数時間ゲームするだけで英語ができるようになるならいいですが、現実はそんなに甘くありません。楽しみながら身につけられるものと、覚えていかなくてはいけないものがあるのです。
嫌いな教科があるのは自然なこと。国語が嫌いな子もいれば数学が嫌いな子もいます。英語だけが特別じゃありません。
早期教育で英語が嫌いになってしまったら・・・それでもやるしかないでしょう。ただ、早期教育のやり方には注意は必要だと思います。やり方次第で、英語嫌いを極力少なくする方法はあると思います。
早期英語教育でぜひ取り入れて欲しいもの
早期英語教育が、ただ「中1でやることを5年生に」となってしまっては日本での英語教育の現状は何も変わりません。せっかく英語を早く始めるのなら、この2つをぜひ学校でも取り入れてもらいたいものです。
①フォニックス。発音のルールを知らないと読めないし話せない。
これは必須だと思います。なぜ日本でフォニックスを教えないのか不思議です。フォニックスが分からないと初めて見る単語を読めないし、単語を覚えるときも大変です。
台湾では、学校でも塾でもフォニックスは必ずやります。ダンナの時代にはやらなかったみたいなので、ダンナは初めて見る単語は発音できません。娘はフォニックスを知っているので、意味がわからなくても、発音はできます。逆に、スペルがわからなくても発音が分かればスペルを推測することもできます。
例えば、” al(all)”の発音のルールを知っていれば、all, tall, ball, fall, hall, mall, small, call, wall,などが同じ発音の仲間でスペルも似ていることに気づきます。あえて” s, m, a, l, l “などと暗記する必要は無くなります。
フォニックスの勉強は楽しいものではありません。ルールを覚えることは面倒だし、挫折しそうになるかもしれません。それによって英語嫌いになってしまうかもしれません。
でもそれを克服しなければ、いつまでたってもきれいな英語が話せるようにはならないし、単語を覚える負担がどんどん増えてしまうだけです。
発音とスペルを結びつけなければ、ただのアルファベットの羅列を暗記し続けるという苦が待っています。英語は大学受験まで、いえ、就職試験、資格試験、昇進試験・・・ずっと続くのです。
学校ではフォニックスを教えられる先生は限られていると思います。またカリキュラムの関係上、たとえフォニックスの指導ができる先生でも授業では教えられないかもしれません。
できる事なら、政府がフォニックス指導をカリキュラムにいれてくれればいいのですが、それが望めないなら、英会話スクールに行くか、本で独学するかの方法になると思います。
お子さん1人で独学するのは大変なので、まずは親御さんがフォニックスを勉強されてもいいんじゃないかと思います。中学程度の単語が分かれば理解できます。
②多読。読書で英語を日常に。
「多読」という言葉を聞いたことがありますか。
多読とは文字通りたくさん読むということです。
私は大学では英文科、そして1年間のカナダ留学も経験しています。塾で英語講師も務めましたが、英語の本を読んだことはほとんどありませんでした。
読んだといえば、読解の教材、英語のテキスト、新聞記事、雑誌の記事など、どれも勉強が目的となり、とても「読書」とは言えないものばかりでした。ページは少ないが、ストレスは多い・・・今まではそんな文章しか読んできませんでした。
多読というのは、自分のレベルのあった英語の本を楽しんで読むというものです。
最初は子供の絵本からでも構いません。英語ができない子は絵から内容を想像しても構いません。大事なのは、隣で誰かが日本語に訳したり、知らない言葉を調べたり覚えさせたりしないということ。
学校の授業でやるような勉強としての「精読」ではなく、自分のレベルと興味のあったものを、辞書を使わず自分のペースで読み進めていってみてください。
目安は、20語のうち知らない単語が1、2個ある程度。それ以上知らない単語が増えると内容がわからなくなってしまうかもしれません。
分からなくなると楽しくなくなるので、最初は本当に絵本程度から読むこと。そうやってだんだん何冊も読んでいくうちに、英語が読めるという自信と、英語のだいたいの構造、表現などが自然に身についていきます。
読むスピードも上がってくるので、学校で教科書や英検や受験などの読解問題を解くときにも苦にならなくなります。
私の生徒にも多読をやってもらっていますし、現にいくつかの私立中学や私立高校では多読を学校で取り入れているようです。
ちなみに私自身は先ほども申しましたように英文科卒業で留学経験あり、そして英検準1級を持っていますが、多読を開始した当初は変なプライドは捨て、アメリカの小学生が読む数千語の本から始めました。だんだんレベルを上げていき、今では10万語くらいの小説を好んで読んでいます。
多読についてもっと詳しく知りたい方には、こちらの本がおすすめです。最新号でなくても一冊手に取っていただければ多読の目的、方法などを知っていただけるかと思います。
私も生徒さんの親御さんに多読についてご紹介したいときには、この本に目を通していただいています。
多聴多読
最後に
日本の早期英語教育を前に不安な方も多いと思います。英語嫌いになってしまったらどうしようとお考えの方もいらっしゃると思います。5年生になる前に塾に通わせるのもアリだと思いますし、オンラインレッスンや英会話教室もアリでしょう。
塾には行かせたくないけど英語は苦手になってほしくないという方は、ここで紹介したフォニックスと多読を早めに家庭で取り入れてはいかがでしょうか。
フォニックスは大変かもしれませんが、多読は簡単にできると思います。まだ勉強の大変でない小学生のうちから多読を始めておくと将来役に立ちます。
多読をすれば話せるようになるかといえば、それはまた別問題ですが、多読を通して英語を読むことに抵抗がなくなれば英語力が大きく伸びるきっかけとなります。好きこそ物の上手なれ、です。
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